About

時間をテーマにした雑誌『fold』は、2009年7月25日に創刊したばかりの新しい雑誌です。

 わたしたちは、眼前で起こりつつある世界規模の経済的不況や変革の波にさらされ、混迷した時代を生きています。また、情報が溢れかえった現代社会のなかでは、リアルタイムという同期した時間への比重が高まる一方、過去の記憶や歴史の蓄積の多くは失われ、散逸の危機にさらされています。「過去」と「現在」と「未来」は、もはや連続したひとつの流れではなくなり、歴史や過去と現在とがバラバラに断絶した状態が、今日の社会の前提条件と言えるまでに浸透してしまったかのようです。

 こうした社会状況や人々の意識の変化に応じて、これまで文化や思想や情報を記録・伝達・保存してきた印刷物それ自体のかたちや機能、そして、それが担うべき役割と責務も変化を迫られていることは確かです。しかし、たとえわたしたちが、かつてないほどの暗い時代を生きているのだとしても、過去が未来へと投げかけている光は、何かしらの手がかりを与えてくれるにちがいありません。
 時を超えて残存する古いものの新しさを、現代へと呼び覚まし、そこに不確かな未来の予兆を見いだすこと。それこそが、本誌の目指すところです。
 そこで、『fold』ではバラバラなものをバラバラなまま寄せ集めるために、紙フォルダ(タトウとも呼ばれている)という形式を採用しました。基本的に、書物や雑誌の場合には、表紙から背表紙まで、最初のページから最後のページまでが単線的な順序で並んでいる1 冊の冊子体として綴じられていることが前提となっています。それに対して『fold』では、文字通り、フォルダのなかにいくつかの冊子や、数枚の大小異なる紙片を入れることで、統一性をもたない複数のものが同時に併存している状況の構築を試みています。そうすることで、互いに関連しないと思われていたものどうしが緩やかに結びついたり、あるいは異なる視点から見えてくるようなことが起こることを望んでいるのです。
 また、この物質的・形態的な工夫のみならず、『fold』では、街中や職場や公共施設などで身近に利用可能なテクノロジーや設備(スミ1色刷のステンシル印刷機、裁断機・製本機、オフィス用文具店、プリントサービス、コンビニのコピー機など)を最大限に活用し、身軽で小規模な印刷・出版活動のモデルを試案することも視野に入れています。コンテンツの執筆・編集から印刷物の流通・販売の経路まで、その生産過程の一連のサイクル自体をデザインすること、新たな行動手段のモデルを生み出すことが、出版活動を展開する場合に、いま改めて考えなければならない課題のひとつでしょう。
 このような小さな規模の出版活動を展開するうえでの流通の問題に対する、ひとつの試みとして、さらには誌面の空間をこえて、読者と相互の交流をはかるための現場を立ち上げるために、ライブ形式のトークイベント「Unfold」を断続的に開催し、その場で雑誌の配布を行っていきます。本誌にとっては、雑誌「fold」とイベント「Un-fold」の両者はともに、活動の中心的な軸として考えられています。「fold」と「Un-fold」は進行中のプロジェクトとして、継続的な雑誌の刊行とイベントの開催とを組み合わせた文化の生成、記録・伝達のための新たな行動様式の確立を、今後も試みていく予定です。そして、この活動が、新たな共働作業者や協力者との出会いを生み出す機会を時折つくり、それが何らかの共同性の創出へと結びついていくことを願っています。

* なお、雑誌「fold」は、東京大学大学院総合文化研究科表象文化論の「エディトリアル・デザイン研究」という田中純教員の授業に集まった幅広い関心と好奇心を持つ大学院生たちを中心に始まった雑誌制作のプロジェクトである。創刊に際しては、駒場キャンパスの設備を利用して、大学の外へと情報を発信していく出版局「コマプレス」を立ち上げ、企画、取材、執筆依頼、編集、デザイン、印刷、製本、流通まで、出版物の制作される生産過程そのものをデザインすることを目指した。

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E-mail: info [atmark] fold.jp

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